コラム:絶対王者の恩恵 | ユベントス・ジャーナル

コラム:絶対王者の恩恵

コラム:絶対王者の恩恵

image@Barca Blaugranes

 ユベントスが2002/03シーズン以来、12年ぶりにUCL(欧州チャンピオンズリーグ)決勝戦へと勝ち進んだとき、相対するバルセロナの選手たちは自信に満ち溢れていた。

 試合開始前のウォーミングアップでもピッチへ出る選手の行動や顔つきにはどこか余裕を感じさせた。顕著に映ったのはDFダニエウ・アウヴェスだ。エスカレーターの手すりに両手と両足をつき“よつん這い”になって降りてきた。

 初のファイナルのピッチに立つFWネイマールですら、その様子に苦笑いを浮かべている。12年ぶりのファイナルの舞台に高揚するユベントスに対し、アウヴェスの行為をいささか不愉快に感じたユベンティーノも少なくないはずだ。

 才能はあった。才能がなければ、いつの時代も育成とスカウティングに定評のあるセビージャへ19歳にして移籍することは決して叶わない。加入からすぐに主力として活躍しているのはなによりの証拠だろう。

 類まれな能力もあった。能力がなければ、サッカーというスポーツを根幹的に変えた、とも評されたバルセロナの主力として、先発メンバーにその名を連ねることはできなかったはずだ。

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 バルセロナのブラウ・グラーナから、今シーズンよりビアンコネロのストライプに袖を通し、アウヴェスはチームの勝利に貢献しつづけていける。このベテランの加入がなければ、2シーズンぶりとなるUCL決勝進出を成し遂げられたかどうか。

 その能力が開花したのはセビージャ時代だろう。クラブの大改革のときにアウヴェスは加入。その後、ファンデ・ラモスの指揮の元で強豪チームの仲間入りを果たすとUEFAカップ(現EL《ヨーロッパリーグ》)出場権を獲得し、2005/06シーズンには58年ぶりに大会制覇を成し遂げている。

 毎年のシーズン開幕前に行われる、昨シーズンのUCL王者とEL王者によって争われるUEFAスーパーカップではバルセロナと対戦。当時のサッカー界を席巻していたMFロナウジーニョを完璧に抑え、3-0の勝利に貢献する活躍をみせている。

 たとえスペインサッカーに明るくなくとも、“全盛期”のロナウジーニョを抑えての“完勝劇”を覚えているサッカーファンは少なくないはずだ。翌シーズンもEL制覇に成功し、クラブに初の2連覇をもたらしている。

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 その活躍によりアウヴェスには世界中のビッグクラブから熱視線が送られるものの、交渉がまとまらず二転三転する。最終的に当時のバルセロナが、クラブ史上歴代3位の移籍金でアウヴェスを獲得した。

 ブラウ・グラーナのシャツに袖を通したアウヴェスは、移籍金に見合った実力を誇示し、移籍初年度に3冠達成に貢献する。その後バルセロナ退団までの“タイトルラッシュ”は周知の事実だろう。

 ブラジル代表でのものを含め、母国の英雄ペレ氏を超える「29」ものタイトルを獲得。欧州で一番成功したブラジル人選手といっても過言ではない。この功績は単に、チームメイトに恵まれただけ、では説明が乏しいはずだ。

 永遠につづくかと思われたバルセロナとの関係は徐々に綻(ほころ)んでいく。

 バルセロナがFIFA(国際サッカー連盟)から移籍禁止処分を受けた2015年、アウヴェスは2017年までの契約延長と1年間延長のオプション付きで契約を更新しているが、この頃には愛想が尽きていたのはよく知られている。

 当時を振り返り「バルセロナの経営陣は俺と顔を合わせて話すことはなかったよ。恩知らずな対応をした。彼らの誠意は形だけの偽物で、選手の扱い方をわかっていない」と吐き捨てている。

 フリーでユベントスに加入したアウヴェスは、たしかにクラブの経営陣との軋轢(あつれき)は口にした。だが、今シーズンのUCL準々決勝でバルセロナと対戦したとき試合前にベンチまで行き、スタッフや選手たちと握手や談笑をしている最中に試合開始のホイッスルが吹かれている。

 読唇術を持ち合わせていなくとも、ルイス・エンリケ監督はピッチを指差し、笑いながら「おい始まったぞ」と言わんばかりの顔をし、他のスタッフは笑い、アウヴェスは慌ててピッチに戻っている。

 微笑ましい光景に思えたし、それだけでも元チームメイトたちとは現在でも変わらない友情があることは容易に想像できる。その試合の終了後、UCL敗退に泣きじゃくるネイマールにアウヴェスは寄り添い語りかけている。

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 「彼は悲しんでいた。状況が逆だったなら、彼は俺の悲しみを理解してくれたはずだ。不思議な感じだったよ。そして心を痛めた。しかし、これは仕事なんだ。ネイマールに対しては『これが人生なんだ』と伝えたよ。俺たちは対戦しなければならなかったんだ」とブラジル代表の後輩に伝えたという。

 セビージャの変革期、バルセロナの革命期に主力として活躍したアウヴェスはユベントスに何をもたらしてくれるか、今は分からない。だがUCLファイナルへ導いてくれたのは、紛れもなくアウヴェスの恩恵に他ならない。

 セビージャ退団のとき「必ず戻ってくる」と涙をみせた孤高の右SBは、バルセロナを経てたどり着いたユベントスで順風満帆のときにある。これから前人未到となるセリエA6連覇、コッパ・イタリア3連覇の挑戦が控え、UCL決勝戦も控えている。

 チームはクラブ史上初の3冠が手に届く位置にある。この偉業達成には苦しい時間も必ずある。そんなとき、アウヴェスはきっとチームを助けてくれるはずだ。サッカーを知り尽くした頼りになる男がユベントスにはいる。

 著者/Juventus Journal 編集部 山口 努

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コメント

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  • アウベスの持つ勝者のメンタリティ、お茶目なムードメーカーとしての価値はとてつもなく大きい。そして思ったよりイタリア式の守備でも活躍が目立ってる。あらためてユーベフロントの優秀さが証明された。