コラム:望郷の果てに見据えるもの | ユベントス・ジャーナル

コラム:望郷の果てに見据えるもの

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 ユベントスのユニフォームを纏(まと)って初めてスタディオ・サン・パオロのピッチに立ったFWゴンサロ・イグアインにとって、本人にしか知り得ないノスタルジーがあったはずだ。

 そして同じくらいの怒りもあったのではないだろうか。

 レアル・マドリーでは光と影を味わった。国内タイトルこそ獲得したが国際タイトルには無縁であり、2009/10シーズンのUCL(欧州チャンピオンズリーグ)に敗退するとファンやメディアから戦犯扱いにされ、チームメイトからも非難された。

 それでも“白い巨人”のユニフォームに愛着を示し懸命に戦った。だが、ポジション争いの激化にともない、ベンチを温めれば移籍の噂が飛び交う状況ではメンタル的にも限界を迎えていたに違いない。

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 そんな折、FWエディソン・カバーニの後釜として2013/14シーズン、鳴り物入りでSSCナポリに入団。イタリア南部の強豪で過ごした3年間で146試合91得点もの記録、ティフォージには色濃い記憶を残した。

 同郷の英雄、ナポリでは唯一無二のMFディエゴ・マラドーナ氏と並び称されるほどの存在になりながら、彼はあろうことか宿敵ユベントス移籍を決意する。理由の一つとして「もっと幸せになりたい」と語っている。(イグアイン、移籍理由を語る「パーフェクトな選択だった」より)

 イタリアでの南北問題は日本人には分かり得ない“ミゾ”が存在するのは周知の事実だろう。10年20年の話ではなく、1世紀以上も続く。両者はとも忌み嫌っている。だからこそ“北”を打ち倒してスクデットを獲得したマラドーナ氏は現在でも英雄であり、神なのだろう。

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 ナポリからユベントスに移籍が決まったイグアインのユニフォームは燃やされ、トイレの便器に捨てられ、イグアインのユニフォーム専用のゴミ箱がナポリの街に設置される画像がSNS上に出回り、日本人の我々にも北と南にある憎悪の念の高さが伝わったはずだ。

 SNSに出回った写真をイグアインが見ていない可能性は限りなく低い。相思相愛だった間柄が一夜にして憎悪に変わったのだから、心中穏やかなはずがない。昨シーズンまで愛したホームスタジアム、サン・パオロでの試合ともなれば尚更だろう。

 顕著にうつったのが第30節のキックオフ前、主審に注意され、ブレスレットを外している。ピアスや指輪、ブレスレットやネックレスを着用してピッチに立つことをルール違反とされている。

 そんな初歩的な、当たり前のルールを、プロキャリア10年以上を超えるイグアインが知らないはずがない。だが、その日に限って“小さな違反”を犯した。その際にブレスレットに深いキスをして、ベンチに近かったFWマリオ・マンジュキッチに手渡している。

 彼にとってたとえ特別なブレスレットだとしても試合に外し忘れて臨もうとしたのは、この一戦がよほどのものであったのは想像にむずかしくない。

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 この試合、スタンドがほぼナポリティフォージで埋まった完全アウェイの第30節ナポリ戦では、ユベントスの選手たちがボールを持つたびに主審の笛が聞こえなくなるほど強烈なブーイングが浴びせられる。

 イグアインには特に痛烈だった。第30節ではシュート「0」に終わり、不発だったものの中2日で迎えたコッパ・イタリア2ndレグでは2得点を叩き込み、同大会3連覇に王手をかける活躍をみせた。

 殊勲のアルゼンチン代表FWは、得点が決まると派手なセレブレーションはなく、小さなガッツポーズを見せ、スタンド席にいるアウレリオ・デ・ラウレンティス会長を指差し、スペイン語で「お前のせいだ!」と読唇術によって解明されている。

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 仮にナポリ会長と円満な関係だったなら、イグアインは果たしてユベントスに移籍したのだろうか。サン・パオロに詰めかける熱狂的で知られるナポリティフォージの熱心な愛をもっと受けたかったのではないだろうか。

 それでも彼はユベントスを選び、移籍1年目のむずかしいシーズンでここまで42試合に出場し27得点を決めている。2試合に1得点以上の特筆すべき数字だ。

 一つのノスタルジーに別れを告げた。理想的な形でラウレンティス会長に“仕返し”もした。心身ともに解放されたイグアインは、バルセロナとの大一番を前に第31節キエーボ戦でも2得点を叩き込み、好調と存在価値を証明してみせた。

 セリエA歴代最多得点記録をもつ稀代のFWが見据えるものは、イタリア制覇ではないはずだ。

 レアル・マドリー時代にも成し遂げられなかったUCL制覇ではないだろうか。イタリア勢の優勝はカルチョの復権の大きな一歩であり、それこそが、愛されながらも別れを告げたナポリティフォージの最高の餞(はなむけ)になるはずだ。

 今シーズンのUCLにおいてイタリア勢最後の砦となるユベントスは日本時間12日3:45、UCL1stレグ、ユベントス・スタジアムにバルセロナを迎える。

 著者/Juventus Journal 編集部 山口 努

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コメント

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  • ビッグイヤーを掲げるためには、イグアインの活躍は必須ですね。ただ、今日の試合のようにディバラも良し悪しに影響しやすそうですね。ディバラが機転を作ってくれるとクアドラード、マンジュキッチが活きてきますが、作れないとサイドサイドになって単調で難しい試合運びになってしまいますからね。今日の試合を、見てる限り皆調子が良いので期待しましょう。マラガ戦で、負けているように十分勝機はあるのでしっかり良いサッカーを展開出来れば勝てると思います。イグアイン、ディバラに特に期待しましょう!

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