コラム:ユベントスの偶像 | ユベントス・ジャーナル

コラム:ユベントスの偶像

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 あの日、“夢の劇場”オールド・トラッフォードにピッチで膝を抱え、2003年当時、GKとしては珍しかったピンク色のシャツを身にまとい、肩を震わせて泣きじゃくる25歳の青年がいた。

 あまりに切ない光景に多くのサッカーファンはもちろん、多くの識者から「大丈夫。君はまたすぐにこの舞台に戻ってこられるよ」と慰めの言葉を、この前途有望なジョカトーレに贈った。

 ユベントスは1997/98シーズン以来となるUEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝戦まで駒を進めた2002/03シーズン。前途のイタリア人ジョカトーレは前年にGKとしては過去最高金額となる56億円でビアンコネーロの一員となり、1997/98シーズンぶりとなるスクデット獲得に貢献している。

 翌シーズンにはCLで躍進する。準決勝レアル・マドリード戦2ndレグではルイス・フィーゴのPKをセーブするなど、決勝戦進出に貢献。ユベントスが獲得に費やした56億円もの大金は、安価なものにしていた。

 決勝戦ではフィリッポ・インザーギの決定的なダイビングヘッドを奇跡的なファインセーブで凌ぐなど、120分を経過してもスコアレスに終わった試合のハイライトを作ることに成功している。

 ハイライトは120分だけでは終わらない。PK戦ではカハ・カラーゼ、クラレンス・セードルフのPKをストップする離れ業をやってのけたが、勝利の女神がユベントスに、若き日のジャンルイジ・ブッフォンに微笑むことはなかった。

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 ダビド・トレゼゲ、マルセロ・サラジェタ、パオロ・モンテーロがPKを外し、アンドリー・シェフチェンコがネットを揺らした瞬間、ユベントスの1995/96シーズン以来となる3度目の欧州制覇は露(つゆ)と消えた。

 「大丈夫。君はまたすぐにこの舞台に戻ってこられるよ」

 この慰めの言葉はブッフォンには当てはまらなかった。2006年にはワールドカップを制し、世界王者にはなれた。しかし“欧州”の名のつく大会になるとなぜか不思議なほど無縁な足跡をたどっている。余談ながら欧州選手権も無冠に終わっている。

 ふたたびCLファイナリストになれたのは2014/15シーズン。25歳の青年だったブッフォンはすでに37歳になっていた。世界屈指の実力を兼ね備えながらも、勝利の女神はまたしても微笑むことなくバルセロナに1-3で敗れている。

 そして昨シーズン、39歳にもなったブッフォンはふたたびファイナリストになれたもののレアル・マドリードに1-4で敗れている。もはや不運では済まされない因果が、彼には憑(つ)いている。

 負の因果は終わらない。

 ブッフォンはロシアワールドカップを最後に、代表引退を口にしていた。ドイツの鉄人ローター・マテウス氏の偉大な記録を超える、前人未到の6大会連続出場がかかっていた。しかし欧州予選プレーオフでスウェーデンに2戦合計0-1で敗れ、その機会も逸した。

 敗戦直後の泣きじゃくるブッフォンの姿には、世界中のサッカーファンの涙を誘ったのは記憶に新しい。この敗退により、イタリア代表の数奇な「12年サイクル」も“一旦”は終焉をむかえた。

 来年1月に40歳になるブッフォンは代表引退を口にしている以前に、現役引退をも口にしている周知のとおりである。唯一の例外はCLを制覇し、2018年冬のFIFAクラブワールドカップを戦うことだと公言している。

 では、現在のユベントスにその可能性があるか? と問われれば、限りなくその可能性は薄く、数字で表すのなら低く、オッズならばその数字は大きくなるはずだ。

 しかし、DFベネディクト・ヘーヴェデスがユベントスの一員としてピッチに立てたのは朗報だろう。クロトーネ戦では先発出場を果たし、攻守に渡りほぼノーミスで試合を終えた事実は頼もしい限りだ。

 そしてアンカーの位置に入ったMFクラウディオ・マルキージオがチームに戻り、かつての落ち着きを取り戻しつつある。試行錯誤の末にたどり着いたユベントスの姿が現在はある。

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 現在39歳のブッフォンは、セリエAにおける2017年のベスト11、そしてベストプレイヤーを選出する『The Gran Gala del Calcio』において双方の賞を賜った。

 いまだ現役最高GKとしてサッカーシーンをひた走るブッフォンだが、残された時間は少ない。それでもセリエA7連覇、コッパ・イタリア4連覇という前人未到の大記録を打ち立て、悲願のCL制覇で引退の花道を歩いてもらいたいのは全ユベンティーノの願いのはずだ。

 思い返せば、2006年に起きたカルチョーポリの際、誰もがブッフォンの移籍を予想した。実際バルセロナ、マンチェスター・ユナイテッド、レアル・マドリードなどのメガクラブが獲得に乗り出したようだ。

 しかしブッフォンはセリエBで戦う憂き目にあいながらも、ユベントスを選んでくれた。残留を公言するかのように2012年まで契約延長してくれた事実は、ユベンティーノにとって、一生の思い出になっているはずだ。

 「大丈夫。君はまたすぐにこの舞台に戻ってこられるよ」

 たしかにこの言葉は正しかった。しかしながら皮肉なことに、ブッフォンはサッカー選手として最晩年になってから“この舞台”の常連となったのは運命のいたずらとしか言いようのない事実だろう。

 これから始まるナポリ戦、CLオリンピアコス戦、インテル戦の3連戦が今シーズンを左右すると言っても過言ではない。

 だがブッフォンは、CLファイナリストになるべく、そして今シーズンこそその舞台で勝つために、ビアンコネーロの頼もしい仲間たちを力強く牽引していってくれるはずだ。

 ジャンルイジ・ブッフォンは来年1月に40歳を迎える。心ないサッカーファンは彼を老害というだろう。しかし、今シーズンこそ悲願の欧州制覇を成し遂げ、ビッグイヤーを高々と掲げるブッフォンの姿を想像するのは、ユベンティーノだけが抱ける夢ではないだろうか。

 著者/Juventus Journal 編集部 山口 努

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コメント

*コメントは全て承認制です。確認にお時間を頂くことも御座いますがご了承ください。
  • 他のチームに移籍していたらCL優勝していたかもしれないですが
    ここまで多くの人に慕われていなかったと思います
    w杯の記録は本当に残念
    願わくばCL優勝して欲しい

    9+

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